No.049ボタニカルふりカキ

ボタニカルふりカキ

広島の人と広島の緑をつなぐプロダクト

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そこに元から存在するものを引き出すこと。

広島のオフィス街に建つ見晴らしのいいコワーキングスペースで出迎えてくれたNOZa-maru代表、建築家の野崎俊佑さんは、建築設計はもちろんのこと、町づくりやさまざまなプロダクトデザインも手がけています。大学院卒業以降、建築業界に携わり続け、2018年にNOZa-maruを立ち上げます。社名にあえて「建築事務所」とつけなかった野崎さんは「枠を設けない方が面白いと思うんです。」と微笑みます。
「僕は “〇〇っぽい” ことがとても大切だと思っています。」と話す野崎さん。「創り出す」というよりは「そこに元から内在する価値を引き出す」ことに重きを置いているのだとか。そんな野崎さんにとって、建築設計とプロダクトデザインの間に境界線はなく、同じスタンスで取り組めるのだと言います。
そんな野崎さんが、「牡蠣殻で植物が育っていく雰囲気」を落とし込んだプロダクト『ボタニカルふりカキ』。その誕生とそれにかける想いについて聞きました。

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きっかけはコンテストへの応募。

広島市現代美術館が主催するゲンビ「広島ブランド」デザイン公募2017に応募しようと思い立ったのがきっかけで生まれた『ボタニカルふりカキ』は、同コンテストで観客賞を受賞しました。一見すると本物のふりかけに見えますが、これはご飯の上ではなく植物にかけるふりかけ、つまり肥料です。
コンテストの公募テーマが「広島らしさ」だったため、牡蠣を取り上げたのがきっかけだと野崎さん。「それに、昔から貝殻は畑に撒いて肥料にする、という漠然としたイメージがありました。そこで、広島の牡蠣を肥料に使い、小分けにして販売するようなプロダクトを提案し応募したところ、書類審査を通過したんです。」

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プロダクト誕生を加速させた出会い。

プロダクトを美術館で展示することになり、制作を始めた野崎さん。牡蠣殻肥料専門メーカーを探していたおり、とある会社に出会います。それは、丸栄株式会社。昭和40年ごろから広島の牡蠣を使った肥料を作っている会社です。この出会いをきっかけに『ボタニカルふりカキ』誕生へのスピードは加速します。
たとえ広島らしさがあったとしても、実を伴っていないならば意味はありません。
 『ボタニカルふりカキ』に深い興味を示してくれた丸栄株式会社から学んだ牡蠣殻の具体的な効能や成分などの深い知識が、そこで力を発揮します。
例えばその効能。「例えば植物や作物の多くは育てているうちに土が酸性化してしまいますが、この『ボタニカルふりカキ』をふりかけることで土壌が中性もしくはアルカリ性に戻ってくれるんです。」
さらに野崎さんは続けます。「広島らしいだけでなく、たくさんの広島の人に手に取ってもらえるプロダクトにしたいと考えていました。」

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広島の人々が、広島の緑を。

野崎さんは、何かデザインを生み出す時、まずは絵ではなくテキストを書くことから妄想を膨らませていくと言います。穏やかな笑顔を絶やすことなく楽しそうに話す野崎さんの頭の中は、今にも溢れ出しそうな優しい妄想でいっぱいなのかもしれません。
「広島の人が、広島の牡蠣殻で、広島の緑を育てる。しかもそれは、街中にいつのまにか咲いている大きな緑でなくてもいい。むしろそれは広島のたくさんの部屋に咲く小さな緑であってほしい。」穏やかにこう話す野崎さんと、その隣にそっと置かれた『ボタニカルふりカキ』の向こうに、広島で息をする何気ない家族たちに灯る小さな幸せを見た気がしました。

写真・取材・文 MiNORU OBARA

店舗情報

写真:ボタニカルふりカキ

ボタニカルふりカキ

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