No.086帽子

帽子

職人の技が光る こだわりの帽子

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音楽が好きな少年は大人になり帽子職人になった

広島では数少ない帽子職人さんがいると聞き、中区昭和町にあるブランド“D,ari”のアトリエに向かいました。どこか昭和な雰囲気のエリアにあるビルの1階。扉を開けると目に入るのは壁一面を覆うような大きな棚に飾られた沢山の帽子。使い込んだテーブルの上には業務用のミシンが並びます。帽子の材料が入っていると思われる袋や道具が所狭しと置かれ、いかにも職人さんの工房にやってきたという気持ちになります。代表の有馬大輔さんはシャープな顔立ちで帽子がトレードマークの男性。広島市のご出身です。若い頃からバンド活動に夢中で、ロックバンドの影響で帽子を被っていたことがこの道に進むきっかけでした。高校卒業後は服飾の専門学校に進みましたが、帽子作りをもっと学びたくてカルチャーセンターの講座に通いだしました。

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11年前にブランド“D,ari”を立ち上げる

今から20年前、広島には今ほど帽子屋はなく、もちろんネットショップもない時代です。自分が被りたいカッコイイ帽子を作ってみたい。有馬さんはそんな純粋な気持ちから学び始めました。帽子の作り方は洋服の作り方と異なり、一枚のフェルトを裁断せず変形させ立体にしていく特殊さがあり、とても面白い世界でした。有馬さんはさらに腕を上げるために上京を決め、昼は大手の帽子屋で働きながら夜は帽子作りの学校に通います。
もっと個人で活動していきたい。そう思っていると展示会に出ないかと声をかけられ出品したのが個人での活動の始まり。11年前にブランド“D,ari”を立ち上げ、受注生産を続けながら手探りで販路を開拓していきます。広島に戻りアトリエを持ったことで広い場所が確保でき、業務用ミシンや帽子の生地を多めに置くことで生産数がアップ。現在では14、15か所のショップに有馬さんの商品を卸しています。

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帽子作りは人生の一部

これまでの道のりは平坦ではなく、若い頃は生活費を削って帽子の材料を買うような時代もあったといいます。「でもこの仕事を辞めようと思ったことはありません。帽子作りは自分が生きていることの一部、生き甲斐です。」と有馬さんは言います。元々モノ作りが好きで始めたというよりは、自分を表現するアートとして始まった帽子作り。始めた頃はかなりアート寄りの帽子を作っていて、売りたくなくて困ったこともあるそうです。
アトリエで“被れないアートな帽子”を見せていただきました。ランプシェードになる樹脂の帽子、どくろの造形の帽子(これは後々商品化されるのですが)など、既存のファッションの枠を壊すアンチテーゼな帽子たち。有馬さんにとって、帽子づくりは音楽で自分を表現している時の感覚に近いのかもしれません。尽きることのない制作意欲で、有馬さんは今日も制作に向き合います。

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職人魂がこめられたビーバーハット

選んでいただいたのは有馬さんの魂がこもった逸品。ビーバーの毛皮で作った帽子です。上品な光沢感とハリがあり、触ると生地はなめらかで肌触りが良く、しっかりした堅さもあります。いわゆる「ビーバー・ハット」は水をよく弾くので、ヨーロッパでは傘代わりに被られ大人気でした。かつて英国紳士の象徴とされた山高帽に使われる最高級素材で、貴族や軍人がこぞって愛用していたと言われます。
頭頂部のくぼみとつばのバランスがとってもスタイリッシュで秋冬のコーディネートの主役になる帽子ですね。
有馬さんの帽子は芸能人や歌手の撮影に使われることもあるそうです。身につけるとコーディネートが格段におしゃれになる美しい逸品。一度手に取ってみませんか。

写真 加藤郁夫 / 取材・文 日高愛子

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