No.092はちみつロールケーキ

はちみつロールケーキ

セオリーを崩した、独自のはちみつロールケーキ

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自分が納得できるお菓子を提供したかったから独立しました

市役所の大通りから少し入った静かな一角にパティスリー「celeste」はあります。建物の真っ白い壁に描かれたストリートアートが特徴の、ちょっとひねりの効いたお店です。この素敵なお店をされているのは、菓子職人の寺田亮さん。高校を卒業してから製菓専門学校で学び、ヨーロッパの三ッ星レストラン、有名パティスリー、東京、大阪で活躍された実力派。寺田さんは様々な経験を積み“自分がいいと思う物を自分の責任で提供したい。”と思い開業を決意し、お店をオープンされて現在7年目になります。
子供のころから自立心旺盛で、自分の道を選択してきた寺田さん。菓子職人の道を進もうと決めた原点にもなる最初の記憶があります。それは寺田さんが2歳の時に経験したある出来事でした。

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亀のドーナツの思い出

2歳のある日、ウルトラマンを見ながら1人で留守番をしていた寺田さん。その日はたまたま雨で、突然雷が落ちテレビ画面が砂嵐(視聴不可)になりました。びっくりして大泣きしていた寺田さんの声を聞き、やって来たお隣さん。「うちに来て一緒にドーナツ作る?」と声をかけてくれ、お母さんが帰ってくるまで家に上げてくれました。その時寺田さんが、小さな手で一生懸命作ったのは亀の形のドーナツ。できた時の達成感と、食べた時の幸せな気持ちが今でも鮮明に記憶されています。中学生になると好きだった漫画「美味しんぼ」の影響もあって調理の世界に進みたいという思いが強まります。本当は中卒で職人に弟子入りしたかったのですが、親に止められ高校には行きました。でもそのおかげで業界を研究する時間ができたといいます。高2で進路を決める時、食に関わる仕事は他にもあるけど、自分はパティシエだと自信を持って選択できました。

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自分を表現する店であり続けたい

開業にあたり、決まったレシピの通りに商品を量産して、定番のお菓子を1年中並べるような店にはしないと決めました。効率やコストを考えれば普通の店ではやらないことです。でも、それを度外視してでも“よいもの“を店に出したい。そして細部まで妥協なきクオリティのものを、たとえお客さんが気付かなかったとしても提供し続けるのが寺田さんのプライドなのです。いくら売れていたとしても、その後2度と作らない商品だってあります。この仕事はお客さん商売ではあるけど、お客さんを気にしすぎない。celesteは“自分を表現する店”でありたいと寺田さんはおっしゃいます。この日午後2時ごろには、既にショーケースの中の商品はほぼ完売。ケーキ好きをうならせ、ハイレベルなスイーツを楽しみに遠方から来る方が後を絶ちません。納得の味を出すため、菓子職人・寺田亮さんは今日もストイックにお菓子に向き合います。

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普通じゃ作れない こだわりのロールケーキ

こちらは逸品に選んでいただいた“はちみつロールケーキ”。celesteらしさを表現したお菓子です。というのも、見えない所にこだわりがいっぱい詰まっているんですね。ケーキ生地は一般的なスポンジではなくスフレ生地。生クリームはいくつものメーカーがある中、扱いの難しい低脂肪のものを使っています。「例えばこの生クリームは泡立ちにくく安定性が悪いので、一般的なロールケーキのセオリーではあまり使われない材料です。でもこれを使うとすごくスッキリして、後口も爽やかになります。」いただいてみると、確かにさっぱりした味で舌の上で溶けていくようです。弾力あるケーキ生地は空気を含んで軽いのですが、しっとりとしていて食べごたえがありました。この味は経験してみるまで分かりません。寺田さんが作るハイレベルなお菓子、気になる人は実際に行ってみてはいかがでしょう。

写真 加藤郁夫 / 取材・文 日高愛子

店舗情報

写真:はちみつロールケーキ

はちみつロールケーキ

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