No.001まーさんのミルクジェラート

まーさんのミルクジェラート

朝搾りの濃厚ミルクジェラート

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酪農で人々を健康にしたい

広島市内から車で約40分。山々に囲まれた静かな地に久保アグリファームはあります。現在副社長を務める久保宏輔さんの祖父・久保政夫さんがこの地に創業したのは1941年のこと。小説家を目指し上京したものの、慣れない都会の暮らしが身体に合わず、病に侵された政夫さん。食や暮らしの大切さを知った政夫さんは文学の道を離れ、酪農の島・八丈島に渡り、そこで牛乳の素晴らしさに魅せられたといいます。島の農業改革に心血を注ぐこと10年。いつの間にか身体はすっかり健康になっていましたが、没頭する余り気付けなかった故郷の貧困を知った政夫さんは、故郷を救うため島から乳牛23頭を連れて帰郷しました。「酪農で人々を健康にしたい」、これが久保アグリファームのはじまり。そしてその想いは、80年経った今も確かに受け継がれています。

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本当の意味での地産地消を目指して

「人も牛も食べるものが何より大切」と、副社長の久保さんは言います。「牛の堆肥で育まれた良質な土のおかげで化学肥料を使わなくても十分栄養価の高い牧草は育つ。そしてその牧草を食べた牛が上質な生乳を生む。そんな自然の流れを大切にしています」。これは決して容易なことではありませんが、80年間守り続けられている久保アグリファームのこだわり。「ここ湯来町で穫れたものを食べて育てる。本当の意味での地産地消、命の循環を感じてもらえる牧場でありたいと思っています」。こうして愛情を持って育てた乳牛から搾る生乳の細菌の数は、国内でもトップレベルの低さを誇ります。「牛舎を清潔に保つなど当たり前のことを当たり前にやっているだけですよ」と朗らかに久保さんは笑いますが、その笑顔の奥には妥協を知らないストイックな姿勢が確かに見えました。

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搾りたての生乳ジェラート

細菌数が圧倒的に少なく新鮮で上質な生乳のみが許されるパスチャライズド製法。ここではその製法を採用しています。栄養価を損なわないよう低温で長時間かけて殺菌するため手間も時間もかかりますが、その味の違いは一目瞭然。濃厚な旨味とさっぱりとした舌触りは牛乳の概念を覆すほどです。そんな生乳を使って手作業で作られるミルクジェラートは久保さんの自信作。「生乳本来の味を味わってもらえるようシンプルに仕上げています」。コク深いが口あたりは軽やか。まさに搾りたてをギュッと閉じ込めたような、そんな味わい。「搾りたてが一番美味しく、そこからは月が欠けていくように味も落ちていくという意味で、搾りたてが満月、と私たちはよく言います。ジェラートも朝搾りの生乳を使って作っているので、出来立ての牛乳の味を楽しんでもらえます」。

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夢の完全放牧に向けて始動

牧場内では、牛の餌やりや乳搾り、バター作りなどの体験なども(要予約)。丁寧な「土作り、草作り、牛作り」を感じることができるのも魅力のひとつです。現在は牛舎での飼育が主ですが、国内でも希少な「完全放牧」を目指して、雑木林の開拓などを進めているのだそう。「コロナ禍で牛乳が大量に余った時にSNSで呼びかけたところ、1000組以上のお客様が買いに来てくださって。応援してるよ!と沢山の声をいただいたことで、先延ばしになっていた完全放牧の計画を進めようと奮い立ちました」。自分たちにしかできないことで恩返しを、そんな思いに駆られたのだと久保さんは言います。「草原を自由に走り回ったり、日の光を浴びたり。牛たちにとってもそれが自然なこと。2030年までの完成を目指して家族やスタッフが一丸となっています」。変わらない想いを持ち続けながらも進化を止めない久保アグリファームのこれからがますます楽しみです。

写真・取材・文 柚木藍子

店舗情報

写真:まーさんのミルクジェラート

まーさんのミルクジェラート

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