No.102はりこのオブジェ
伝統の技法はそのままに、現代のくらしに合う作品を
はりこの制作をすることが、癒しの時間に
「ちょうど厄年だったんですよ」とヨーロッパから戻ってからの数年間のことを竹原さんは思い出します。妊娠していることがわかり喜びに沸いた数か月後、実母の病気が発覚。出産1週間後には義父が、5か月後には実母を亡くすという悲しい出来事が続きました。産後でバランスが崩れているうえに、思ってもみなかったことが続いたこと、いろいろな人に会わないといけないストレス、頼る母もいない、誰に頼ればいいかもわからないと追いつめられる日々を過ごしました。「この状況から脱しないといけない」と思い始めたとき、手作り仲間がイベントに出ないかと声を掛けてくれました。子育てしながら制作できる物をと考えたときに、思い浮かんだのが「はりこ」。漆造形と制作過程が似ていますが、漆に比べて扱いやすいことが決め手になりました。
「制作に没頭していると、つらいことを忘れられた」と竹原さんは振り返ります。子育てしながらの制作は思うようには進まず、家族にも迷惑をかけることもありました。それでも制作を辞めることはなく続けることで、新たな展開が舞い込み作家として本格的に活動も再開することができました。はりこの作品たちは、内側に閉じていた竹原さんの世界を外向きに広げ、竹原さんが自分自身を取り戻していく時間をもたらしました。
「制作に没頭していると、つらいことを忘れられた」と竹原さんは振り返ります。子育てしながらの制作は思うようには進まず、家族にも迷惑をかけることもありました。それでも制作を辞めることはなく続けることで、新たな展開が舞い込み作家として本格的に活動も再開することができました。はりこの作品たちは、内側に閉じていた竹原さんの世界を外向きに広げ、竹原さんが自分自身を取り戻していく時間をもたらしました。
竹原さんおすすめの逸品/はりこのオブジェ
粘土で作った型に「張子紙」という和紙を馴染ませ、胡粉※1と膠※2を混ぜたものを塗り重ねたものに、アクリル絵の具で色を付ける竹原さんの「はりこ」。化学物質をできるだけ使わずに、昔ながらの材料と技法を使った作品作りを心掛けています。竹原さんが物作りをするうえで大切にしていることは、現代の生活スタイルに合い生活に馴染む作品に仕上げること。「昔ながらの技法を使った伝統的なスタイル作品を、私が作る必要はないと考えています。今の暮らしに合うようにスタイルを変化させることも、技法そのものを残して伝えていく一つの方法になるのではないか」と作家としての思いを語ってくれました。
竹原さんの「はりこ」の魅力はその表情にあります。シンプルなのに豊かに話しかけてくる、なんとも魅力的な顔つきに魅かれることでしょう。一度手にしたら離したくなくなる、そんな愛着がわいてくる作品に是非一度触れてみてください。
※1貝殻をすり潰したもの ※2動物の皮や骨などを原料とした天然の接着剤
竹原さんの「はりこ」の魅力はその表情にあります。シンプルなのに豊かに話しかけてくる、なんとも魅力的な顔つきに魅かれることでしょう。一度手にしたら離したくなくなる、そんな愛着がわいてくる作品に是非一度触れてみてください。
※1貝殻をすり潰したもの ※2動物の皮や骨などを原料とした天然の接着剤
写真 的野翔太 / 取材・文 山名恭代
店舗情報
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店名
KITUTUKIFABRICA
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Instagram
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その他
・金継ぎのお仕事
屋号: tsutsu(ツツ)
HP:https://tsutsu.shopinfo.jp/
インスタ:https://www.instagram.com/tsutsukintsugi/
はりこのオブジェ