想像を絶する精密な作業が生み出す世界観
陶芸家・槇原太郎さんが生み出す器には、プリントかと見間違えるほど精密な模様が施されています。手に取るとわずかに感じる凹凸で、模様は筆で描かれたものではないことに気が付くはず。そんな槇原さんの作品多くは、成形した土が乾ききらない間に、針で彫られた模様に呉須で埋めて模様をつけたもの。彫らずに絵付けをする作品もありますが、それらも人の手が生み出したと思えないほど繊細に描き込まれています。槇原さんの作業は、作家の仲間内でも「常識を逸している」といわれるほど。ストイックなほどに精密に仕上げられた模様は、フリーハンドで描かれているというから驚いてしまいます。槇原さんの右手の中指と小指があたる手の平には、針や筆を強く握りしめて作業を繰り返したことによる痛々しいほどのタコができています。その手からは、槇原さんが作業に打ち込んだ膨大な時間が感じられました。
そんな槇原さんが陶芸の世界に出合うのは、18歳の時。高校卒業後の進路として飛騨国際工芸学園陶芸学科を選んだことが始まりでした。