No.151ハーブローストポークとキウイマスタードソースのサラダ

ハーブローストポークとキウイマスタードソースのサラダ

心と身体がよろこぶハーブたっぷりの新鮮サラダ

きっかけは子どもの頃に観たあるテレビ番組

コロナ禍でもテイクアウトを求める人で連日客足が途絶えなかった店があります。平和公園にほど近い場所でこぢんまりと営む『wine&salad Uluru』です。ここを営むのはイタリアン、フレンチ、ワインバーなどで経験を積んだ廣中祐二さん。廣中さんが食の道を志したのは、中学生の頃に観たあるテレビ番組がきっかけだと言います。「自分と同い年の少年が単身ウィーンに行ってお菓子の修行をしている密着ドキュメンタリーをたまたま観て。これだ! って衝撃が走ったんです。俺、ウィーンに行きたい! 料理人になる! って(笑)」。突拍子もないことを言い出したと家族は呆れますが、この出来事が廣中少年の人生の方向を定めることになるのです。料理の道に強く憧れを抱いたまま高校に進学すると、まずはファミレスでアルバイトを始め、洗い物捌きを習得。その後は大阪の調理師専門学校に進み、卒業後はフレンチのコックとして基礎を叩き込みました。広島に戻ると、その頃広島のイタリア料理界を牽引していた『サンマリオ』グループに入社し、『リストランテマリオ』でサービスマンを経験。ジャンルも、持ち場も、とにかく様々です。それは何でも自分で知っておきたい、経験しておきたいという廣中さんの気持ちの表れ。

必要な回り道を経て辿り着いたひとつの形

そして数年の勤務の後、廣中さんは気付きます。「イタリア料理店で働いている自分が本物のイタリアを見たことがないのは不自然だ」。本場ヨーロッパを知りたい。そうだ、旅に出よう。そして、バックパックひとつで半年間のヨーロッパ旅へ。廣中さんの脳内と行動はいつだって直結しています。子どもの頃から何も変わらない、真っ直ぐな衝動。感情の赴くままに、行動する。旅から帰国すると、今度はもっと日本の社会、大企業を知りたいと考え、そうだ、ホテルで働こう、と。ソムリエの資格を取る前にもっとワインについて知りたいと考えると、そうだ、ワイナリーで働こう、と。そして、実際にホテルマンを経験したり、住み込みでワイナリーで働いたり。ただ思うだけではなくちゃんと行動に移していくのです。「同世代の人達は30歳前後で独立することが多かったけど、自分はあれを見ないと、あれを経験しないとって回り道をしちゃう。遠回りな人間だと自分で理解していたから焦りはしなかったです」。妥協知らずの完璧主義。一から十まですべてを理解して、習得して、そこからがスタート。周りには頑固だと言われることも多いと笑いますが、きっとそれが廣中さんの持ち味。経験値を上げてようやく自分の中で1つの形にできると納得ができたのは2016年、40才の時でした。いよいよ『wine Uluru』のオープンです。

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コロナ禍でサラダのテイクアウト専門店に

朝9時からオープンし、夜の20時には閉店するという型破りなワインバー『wine Uluru』は、そのスタイルも、野菜を中心とした料理も、確かな目でセレクトされたオーガニックワインも好評で、瞬く間にファンも多い人気店に。そんな折の、コロナ禍による緊急事態宣言。けれど、広島に発令されるよりも前に、廣中さんは、サラダを中心としたテイクアウトのスタイルへとお店を変化させることを考え、動き出していました。「食べ物のことに限らず、世の中や社会が何を求めているか、ということは常に考えていて。こんな状況で皆が何を必要としているのかを考えた時に、野菜は毎日摂りたいよなって。そこから『salad Uluru』の発想に繋がりました」。そんなふうに物事を考えるようになったのは、ヨーロッパを始めとしたバックパッカーの旅の経験が大きいと廣中さんは言います。「沢山の旅を経験して視野が広がりました。これから未来を担う子どもたちにはとにかく旅をしてほしいですね。贅沢な旅ではなく、人と出会える旅。もう何十年も前のことだけど、今でもすべて事細かに思い出せるくらい毎日が刺激的で本当に楽しかったから」。

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一皿でお肉も野菜もたっぷりと味わえる

廣中さんがおすすめする逸品は、タイムなどのハーブで黒豚の肩ロースを香り漬けしたローストポークと、梶谷農園のたっぷりの野菜にオリジナルのキウイとマスタードのソースをかけた新作のサラダ。Instagramでもメニューは次から次へと更新され、コアなウルルファンも飽きさせません。「自分が飽き性なので新作はどんどん考えています(笑)。次にやりたいことも常に考えていて、これから迎える50代も楽しみで仕方ないんです」と廣中さん。「4年前の豪雨災害の後、毎月炊き出しのボランティアを1年間現地でさせてもらって。その時に現地入りするまでが本当に大変だったんです。ちゃんとコミュニティーを作っておけばもっとスムーズにボランティア活動ができたなって」。その教訓を生かし、炊き出しのNPO団体を立ち上げたいと考えているのだそう。「何かあった時にすぐに動くために、自分はお店をやってるんだって気付いたんです。それが、社会のため、人のためになる仕事だと思っています」。常に少し先を見据えながら続ける廣中祐二の旅。これからも目が離せません。

写真・取材・文 柚木藍子

店舗情報

  • 店名

    wine&salad Uluru

  • 住所

    〒730-0853 広島市中区堺町1-1-8

  • 連絡先

    082-233-0322

  • 営業時間・
    定休日

    【営業時間】9:00〜16:00、17:00〜20:00
    【定休日】不定休

  • Instagram

    https://www.instagram.com/salad_uluru/

写真:ハーブローストポークとキウイマスタードソースのサラダ

ハーブローストポークとキウイマスタードソースのサラダ

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