No.157塩むすびと燗酒

塩むすびと燗酒

人と縁が紡ぐあたたかい時間・料理・燗酒

創作料理と燗酒がうまいアットホームなお店

アストラムライン安東駅から徒歩2分ほどの場所に、燗酒と美味い料理の食べ合わせが楽しめる居酒屋があります。“あさ菜ゆう菜”。23年前にお母さまが始めた店を、息子の中村誠さんと若奥さまの沙貴さんが切盛りされています。
「お店では素材と出汁を活かした和食のほか、洋テイストの料理やスパイス料理も提供します。是非燗酒と合わせる楽しみを知って欲しい。」そう言う名物店主の誠さん。愛してやまない日本酒への想いを話し出すと止まらなくなる情熱家。そして、それを笑顔で支える沙貴さん。割烹着を着た2代目おかみさんです。
おふたりの作るアットホームな空気が居心地よく、カウンターに座るとまるで自宅に招待されているよう。この楽しい空気を楽しみに、遠くは宇品から来店する常連さんもいらっしゃるのだとか。
7年前に亡くなったお母さまが造った店の伝統を受け継ぎながら、これまでにない料理やお酒を取り入れ、「あさ菜ゆう菜」は独自の変化をしています。

母の夢だったお店を受け継ぐことを決めた日

誠さんは人との繋がりに導かれるようにして飲食の世界に入りました。
アメリカの大学に留学していたある日、日本にいる母から「居酒屋を始めました」と手紙が届きます。「母には憧れの店があって、自分の店を持つのが夢だったそうです。」
しかし中村さんが帰国した頃、病が母を襲います。
誠さんは他の仕事をしながら少しずつ母の店を手伝うことに。しかし体調は回復せず、「あさ菜ゆう菜」は遂に閉店することになりました。
お店を愛してくれた沢山の常連さんが送別会に集まり、母と名残惜しく過ごしている輪の中に誠さんもいました。「その送別会が始まった時はそんなつもりはなかったのですが…夜も更けてお酒も進み、こんな素晴らしいお店を閉じるのはもったいない! という気持ちになり、気づいたら『俺が店を継ぎます!』って言ってました(笑)」
実は誠さん、元々料理は大の苦手。一念発起してそこから努力を重ね腕を磨き、店を続けていったのです。

人の縁に支えられ店が続いてゆく

「母がこの店をしていなければ食の道に入ることもなかった。でも店を続けてみて、これは自分の天職だと感じています。」母が亡くなった後も、お客さんから沢山の気遣いや温かい言葉をもらいました。
そして、沙貴さんとの出会いと結婚があり、みんなのお店「あさ菜ゆう菜」は続いています。
“良いものは受け継ぎ、自分たちの文化も作りたい。”夫婦でお店をするようになり、メニューも変化していきます。特に日本酒にはこだわりがあり、お店の棚には愛してやまない山陰を始め地方の小さな酒蔵の日本酒が並びます。
「日本酒の可能性は大きいんです! 僕たちも日本酒の世界を知って食の楽しみが広がりました。この店では燗酒を中華や洋食、カレーなどとともに楽しむスタイルを提唱しています。」
その背景には「真っ当な酒造りをする小さな蔵を応援したい」という想いがあるそう。
人を想う気持ちが、このお店の新しい時を紡いでゆきます。

2代目おかみが作る塩むすび

先代おかみのお母さまも作っていた、「塩むすび」。沙貴さんが漬けた自家製梅干しと菜の花の塩漬けを添えて。日々新しいメニューが増えていくあさ菜ゆう菜ですが、塩むすびは変わらぬ一皿です。
お米は白木の契約農家さんが育てた安心・安全なものを使っています。
勧められた燗酒と一緒にいただきました。海苔の磯の香りがふわりと鼻腔に広がり、微かに効いた塩味がたまらない、おふくろの味。
日本酒は「辨天娘・純米酒」を。常温と飲み比べてみると、燗酒の方が華やかな薫りが広がり、食事の味とぶつからないことが大きな驚きでした。まるで「温かなご飯」をいただいているような感覚で、どんな料理も受け入れる懐の広さがあり、おむすびともマッチします。
人と美味い酒と料理が作る楽しい時間が過ごせる「あさ菜ゆう菜」。どんな人でも受け入れてくれるアットホームなお店。楽しい名物店主とおかみさんに会いに、是非行ってみてください。

写真 田頭義憲 / 取材・文 日高愛子

店舗情報

  • 店名

    あさ菜ゆう菜

  • 住所

    〒731-0153 広島市安佐南区安東2-12-2

  • 連絡先

    082-878-4848

  • 営業時間・
    定休日

    【営業時間】水~日曜
     水木16:00~22:00、金土16:00~23:30、日13:00~20:00
    【定休日】月・火曜

  • Instagram

    https://www.instagram.com/asanayuuna.hiroshima/

写真:塩むすびと燗酒

塩むすびと燗酒

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