No.162SKELETONフレーム

SKELETONフレーム

使う人の個性際立つ、シンプルな構造の木製フレーム

デジタル化でより正確に。新しい時代のものづくり

CNCプロダクト―……耳慣れない言葉に胸を高鳴らせながら、取材場所に向かって車を走らせました。たどり着いたのは安芸高田市。のどかな田園風景のなかに、元工場を利用した工房が佇んでいました。入口から覗くと、無骨で雑然とした雰囲気のなか、それとは正反対のナチュラルな雰囲気を纏った小屋が目に飛び込んできました。お話を伺った「SSca」の事務所です。自分たちでつくった、と聞いて驚きました。
SScaは、CNC工作機械プログラマーの稲垣聡さんと友美さんご夫妻が手がけるデザインプロダクト。コンピュータで工作機械を操作するCNC (Computerized Numerical Control)の木材加工機を使い、ものづくりを行っています。2人の夢は、CNCで家をセルフビルドすること。「家族がどう増えるか分からないし、年を取れば好みや生活スタイルも変わる。だから、100年持つ家じゃなくて、5〜10年でつくり替えられて、低コストでできる家を目指しているんです」。今住みたい場所を自由に選び、今の気持ちに最もフィットする家をつくる。そう遠くない未来にそんな時代が来る…そう考えるだけでワクワクします。

新しいことをしなければ、とたどり着いたデジタル業界

20代の頃から、実家の家業だった刺繍業を主に、洋服やドレスなどの制作を手がけてきた聡さん。「それだけでは時代に取り残されていくという感覚があって。10年ぐらい前から、何か新しいことをしなければ、と漠然と考えていましたね」。そして、着ぐるみをつくってほしいという要望をきっかけに、布を極力無駄にしないように裁断するため3DCADを学びはじめました。
また同じ頃、聡さんは年に1度、広島を拠点に活動する職人や作家を集めた作品展示会「広島職人博覧会」に出展しており、2015年の展示会では布を使ったテントを出展しようと考えていました。テントの形状を模索しているなか、偶然参加したレクチャーで木工加工メーカーによるデジタルファブリケーションの話を耳にします。「木材と布をコラボしてテントをつくったら面白いかも」。そう考え、そのメーカーの担当者に相談しました。限られた時間や強度面を考慮し、試行錯誤して生まれたのが、建物を躯体まで削ぎ落とした状態をイメージした5角形の形状。それが、SScaの代表的な作品「SKELETON(スケルトン)」の原点です。

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夫婦でCNCプログラマーに。「CNCで家をつくりたい」

「SKELETONはいろんな展開ができそう」と考えていた聡さんと友美さん。自分たちで使ってみようと、家型の骨格を生かしたコーヒースタンドでイベント出店しました。それがきっかけとなり、さまざまなイベントで使用したいと声がかかるように! また、セレクトショップを経営していた友美さんも、次第に空間デザインに興味を持ち、CNCプログラマーに転身しました。
そんななか、何年も家を探していた2人。「どの家もまるでコピペしたみたいで、入らなくても中が想像できちゃうんですよね。一生分の稼ぎを注ぐのに、全然テンションが上がらない。そんなとき、アメリカではCNCの機械を使い、家とかスケールの大きなものもつくっているのを知って、これだ! って」。事業に対しての不安、自分たちの思い描いた家をつくりたいという夢、それらを解決できると大型のCNC加工機の購入を決意。広島市南区で縫製と刺繍業を、安芸高田市でCNC業を行う、二拠点生活がスタートしました。
2019年11月には、The Trunk Marketの巨大パビリオンを製作。その圧倒的な存在感を今でも覚えている、そんな人も多いのではないでしょうか。

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テント、屋台、受付台、空間装飾…使い方は無限大

「SScaらしい逸品ってなんだろう」と聡さんと友美さんはとても悩みながら、最初は気軽さのある木製のアルバムカバーやチェアを逸品の候補に考えていました。最終的に選んだのは、プロダクト立ち上げのきっかけであり、一番思い入れの強いSKELETON。いろんなシーンに合わせてカスタムできる、組み立て分解式のフレームです。軽い木材を使っているので、女性でも簡単に持ち運びや組み立てができるようになっています。
五角形のフレームだけというシンプルな形は、アイデアにより使い方が無限大に広がります。例えば、マルシェなどの出店ブースをはじめ、イベントやブライダルの受付、セレクトショップのハンガーラック…などなど。「出店ブース一つ取っても、お店によって全然違うディスプレイになって面白いんですよ」と友美さん。実は、SScaの事務所も、SKELETONを3つ繋げ、小屋のフレームにしています。空間の装飾にも使えるので、美容院やカフェのインテリアに。子ども部屋のアクセントなど、自宅に取り入れてもきっと可愛い。あなたならどんなことに使いたいですか?

写真 加藤郁夫 / 取材・文 佐藤明日香

店舗情報

写真:SKELETONフレーム

SKELETONフレーム

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