No.013切手用はんこシリーズ/広島レモン

切手用はんこシリーズ/広島レモン

無性に手紙を書きたくなるスタンプ

消しゴムは小さなキャンパス

「消しゴムはんこ」と聞いて皆さんはどんなものを思い浮かべますか? 私は、ヤムヤムスタンプの作品に出会うまで、私の中では「趣味の手作り」という印象でした。けれど、ヤムヤムスタンプの消しゴムはんこは、そんな思い込みをあっさり覆すクオリティでした。手描きの線画のように細く、繊細なライン。「そこまで描く!?」というほど細部まで再現する技術。イケダユミさんにとって、消しゴムはまるで一つの小さなキャンパス。
オーダーが入ると、「まるで聞き取り調査だね」と言われるほど、細かくイメージをヒアリングします。どんなスタンプを作りたいのか、好きな色や、趣味、嗜好をとことん聞いて、さらに下絵を何通りも描いて、イメージをとことんすり合わせます。例えば、似顔絵のオーダーでは「眉毛の毛をもう少し少なくしてほしい」なんて要望に応えることもあるそう。「大変だけど、お客様の要望と作品とがバチっとあった時が爽快」そう話す表情は、職人そのものです。

消しゴムはんことの出会いは年賀状

イケダさんが消しゴムはんこに出会ったのは、年賀状作りのツールとしてOL時代に愛用していた『プリントゴッコ』の代替になるものを探していた時。「カッター1本で作れる」というキャッチコピーに惹かれて購入。早速、やってみると、“彫る”という作業が面白くてすぐにハマってしまったそう。夜な夜な作品を作っては友人にプレゼントしていたといいます。そのクオリティの高さが噂となり、教室の講師をするようになったイケダさん。「本には書いてないようなちょっとしたコツを教えてあげると、皆さんの手際が明らかに変わるんです。それがとても嬉しかった」。
そのうち「こんな消しゴムはんこを作ってほしい」というオーダーも入るようになり、ついに消しゴムはんこ作家としてデビューすることになります。34歳の時のことでした。

ピンチを転機に変えて

順調に活動していたイケダさんですが、ある日、ショックな出来事が起きてしまいます。イメージをすり合わせるために描いた下絵をあるお客様に見せたところ、「これでは出来上がりを想像できない」と言われてしまったのです。「自分では伝えたいことが描けているつもりだったのに、相手に伝わっていないということがとてもショックでした」。
それでもめげることなく「ものをちゃんと捉えられるようになりたい」と一念発起。水墨画の先生に精密画を習うことにしました。3年間みっちり、教室に通ったその努力と経験は、彼女に確かな技術と自信をもたらしました。そして現在は、個人のお客様だけでなく、お店のロゴや名刺など業務用のオーダーを請け負うまでに成長しました。
最後に、消しゴムはんこのいいところ、面白さについて聞いてみると、「綺麗にスタンプできた時も気持ちがいいのですが、時々インクがかすれるのも、それはそれで味わい深いんですよ」とのこと。世界に一つのオリジナルスタンプ。あなたも一つ、いかがですか?

切手用はんこシリーズ/広島レモン

今回、逸品として選んでくれたのは「切手用はんこシリーズ/広島レモン」。通常のスタンプと、レモンの部分に色をつけるためのスタンプの2つがセットになっています。この2つはもちろん別々に彫るそうですが、寸分の狂いなくきっちりレモンの枠内に色が入るので、捺してみると素晴らしく気持ちがいいんです! そしていうまでもなく、この「広島レモン」というキャラクターの愛らしさ。このスタンプを捺すために、わざわざ手紙を書きたくなってしまいそう。
切手だけでなく、メッセージカードやちょっとしたプレゼントにスタンプしても喜ばれそうです。

写真 加藤郁夫 / 取材・文 イソナガアキコ

店舗情報

写真:切手用はんこシリーズ/広島レモン

切手用はんこシリーズ/広島レモン

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