No.026革と天然木の鞄
個性派なのにフォーマルにもデイリーにも使える
唯一無二の作品づくり
体調とにらめっこしながら、ヴィンテージ系の生地で布小物を作る作家として、歩みを始めた彼女に一つの転機が訪れます。広島市佐伯区にある『FRASCO』というショップのギャラリーへ出展させてもらうことになりました。オーナーは作品に対して『これはいい、これはダメ』とはっきりジャッジしてくれたと言います。「第三者の目線としての的確なアドバイスはとても勉強になりました」。これをきっかけに作家としての才能を少しずつ開花させ、ブランド名も『ヒトツトテ。』に変えました。ヴィンテージパールや真鍮を使ったアクセサリーを作ったり、日傘を作ったり、作品の幅もどんどん広がったと言います。「飽き性だからすぐ違うものを作りたくなる」と言いつつ、「流行っているものは作りたくなくて。作品の希少性は大事にしたいんです」。口に出しては言わないけれど、作家として唯一無二の存在でありたい、そんな作家としてのプライドをこの言葉に感じました。
革と天然木の鞄
『ヒトツトテ。』は、イベントやギャラリーへ出展しての手売りが基本。縁を繋ぎ、少しずつ販路を伸ばしていきました。目標だった百貨店へも出展。それに合わせて新しく生まれた商品ラインが、革でつくるバッグやアクセサリーでした。今回、紹介いただく逸品も黒革の鞄です。手彫りの天然木の持ち手が印象的でユニークなデザインですが、カジュアルにもフォーマルにも持てるし、デイリー使いにちょうど良いサイズ。革は植物タンニンで鞣(なめ)したものだけを選び、シボの表情にもこだわっているそう。持ち手も色々なパターンを考えて「自分で木を彫ってみようとも思ったんですが、案外と力がいるんですよ。こりゃ無理だと思って、作家さんにお願いしました(笑)」おどけたように言うけど、どうやら本気で彫ろうと思っていたようです。そんなお茶目な素顔に触れて、『ヒトツトテ。』の作品がもっと好きになりました。