No.003お出汁 発酵 野菜の料理

お出汁 発酵 野菜の料理

人、街、自然と共生する料理人

きっかけは音楽好きの集まるお店を作ろうと飲食の道に。

基町アパート。戦後まもなく建てられた巨大な団地はそれだけで一つの街のようです。アングラ感のあるアーケードに並ぶ雑多な飲食店の中で、和モダンな外観がひときわ印象的なのが「じ味一歩」です。料理を提供する店主の河邊一歩さんは呉市出身。もともと音楽業界の道を目指していたのだとか!なるほど、店内には素敵な音楽がかかり 入り口に置かれたレコードプレイヤーが異彩を放っています。音楽好きの集まれるカフェやバーができたらという理由で飲食の道へ入られた河邊さん。次第に食の世界に惹かれ、この基町アパートに店を出すことに。広島の農家さん×人×基町アパート。彼が奏でる人生のストーリーに耳を傾けてみましょう。

収穫祭で縁あった農家さんとの交流が影響を与えました

音楽が大好きでバンド活動に打ち込んでいましたが、海外(インド)から帰国した折、日本の良さを改めて知ることに。河邊さんは日本料理の修行を積まれます。そして農家さんとの出会いがその後の人生に大きな影響を与えました。「気候、風土に抗うことなく、先代から受け継いだものを次の世代に繋げる」。収穫祭に参加したのをきっかけに、広島県内の農家さんの熱い想いを肌で感じます。その足で畑に何度も通い、土に触れるなかで、命の循環…微生物や昆虫、動物といった生き物達と共に人が生きること、自然の大きな流れを感じた河邊さん。次第に農業をすることにも惹かれはじめたといいます。でも街中に住んでいる彼の役割は「生産者さんとお客さんを“つなぐ”こと」でした。お店で使っているのはもちろん、広島の生産者さんが収穫された新鮮なお野菜です。

たくさんの素敵な人が背景にいて、このお店が構成されています

お酒が好きだから生産元に行ってみる。器が好きだから陶芸作家さんに会いに行く。お箸も職人さんに作っていただいたもの。そしてリスペクトする生産者さん。さまざまな人に会い、想いに触れ、それが「じ味一歩」の表現に一つ一つ加えられていきます。それはまるでDJが音源をミックスしてストーリーを作っていくかのよう。そしてお店のある基町アパートには様々なバックグラウンドの方が住んでいます。多種多様な暮らしが混ざった世界観を今後は料理にも織り交ぜていきたいと語る河邊さん。人や場所、食材のエネルギーを織り交ぜ、お客さんに楽しんでいただく。最高のバランスを引き出すために調理法には研究に研究が重ねられます。料理をしているその姿は、板前というよりは…指揮者。人をつないで音を紡ぐ表現者の様な印象です。関わっている人の想いを届ける最終走者として、今日も河邊さんは厨房に立ちます。

さまざまなお野菜をしっかり食べられます

お料理は基本的にコース料理のみ。今回は特別にコースで使われているお野菜を盛り付けていただきました。煮る、焼く、蒸す、揚げる、発酵させる…様々な要素が“ミックス”されています。農家さんが収穫した自然の恵みをふんだんに使う“滋味深い”お料理がいただけます。メニューは今のところ(2020年12月現在)なく、おまかせのコース料理のみなので事前に予約が必要。河邊さんは気さくな方で食材について聞けば熱くストーリーを語ってくれます。お酒もお好きで日本酒やワインも揃えられているので、フードペアリング的にお皿ごとにおススメのお酒を聞きながらゆっくりといただくのも素敵です。基町アパートの中にこんな素敵な隠れ家的なお店があるなんて。こっそり秘密にしておきたい気持ちもちょっぴりありつつも、この舌と耳と目を楽しませるアートな時間は是非知って欲しいと思います。河邊さんにしか奏でられないストーリーを感じに、お店の暖簾をくぐってみてください。

写真 加藤郁夫 / 取材・文 日高愛子

店舗情報

  • 店名

    じ味一歩

  • 住所

    〒730-0011 広島市中区基町19-2 基町ショッピングセンター429

  • 連絡先

    082-836-4670

  • 営業時間・
    定休日

    【営業時間】18時~23時
    【定休日】日曜日

  • Instagram

    https://www.instagram.com/jimi_ippo/

  • 注意事項

    コース料理のみのため事前に電話にてご予約ください

写真:お出汁 発酵 野菜の料理

お出汁 発酵 野菜の料理

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