No.009オリーブパン

オリーブパン

島の香りを纏った、フランス生まれの素朴なパン

パン屋に転身! いくつからでも夢は叶う

キュッと結んだ手ぬぐいとエプロン、とびっきりの明るい笑顔。会うだけで元気をもらえる女性の正体は、江田島市でパン屋を営む西村京子さん。お店の名前は『しまのぱん souda!』。西村さんが大好きな、空・海・大地の頭文字を紡ぎました。もちろん、ここ江田島には清らかな空気が漂う大きな空と、キラキラと輝く美しい海、暮らす人々を優しく包み込む大地があります。夢を叶えた場所は、そんな江田島にある一軒の古民家。このまちでパン屋をオープンしようと決めてから、前家主さんから譲り受けた大切な場所です。広い縁側から明るい日差しが届き、パンを買いに来たお客さんたちがほっと一息つく憩いの場にもなっています。西村さんは山口県岩国市出身。広島の大学を卒業後、広島のケーブルテレビ局に就職し、18年間番組制作の仕事をしていました。忙しい日々の中、30歳を過ぎた頃に「いつかは島でパン屋をやりたいな」と思うようになったと振り返ります。

地域おこし協力隊となり島の魅力を吸収

テレビ番組制作の現場で、企画・取材・撮影・編集まですべてをこなしていた西村さん。行動力も抜群! パン好きが高じて多忙ながらもパン教室へ通い、やがて趣味でパンを作るようになり、イベントに出店するにまでなっていた西村さんが、夢への第一歩を踏み出す瞬間が訪れます。2016年3月、暮らしを変えることから始めてみようとテレビ局を退職。タイミングよく募集のあった江田島市の地域おこし協力隊として採用され、翌4月から就任することが決まりました。同時に江田島での生活がスタート。任期は3年間、島の特産品として栽培されているオリーブをPRすることが西村さんの主な仕事です。オリーブの広報紙発行や、オリーブのワークショップなど、2019年3月末まで島内を持ち前のバイタリティで駆け回ります。「この3年間、島のみなさんとの出会いひとつひとつが私の宝物になりました。そして、この島でパン屋さんになろうと決心しました」と西村さん。

パン×島で出会ったオリーブ=しまのぱん!

2019年4月からの約1年に渡る準備期間はまさに怒涛の日々。まずはパン作りの基礎を本格的に学ぶこと。薪を燃やして石窯で焼くパンを作りたいと思うきっかけにもなった、【捨てないパン屋】として日本全国からファンが足を運ぶ『ブーランジェリードリアン』の田村さんのもとで住み込み研修を受けるのです。まさに、寝ても覚めても頭の中はパンのことだけ。そんな日々をとても幸せなことだと改めて実感した西村さんは、自分にしか作れないパンを作るのだと誓い、江田島産のオリーブを使った自家製酵母を作ります。さらにオリーブの知識を深めるために本場イタリアへ向かいます。帰国後は、古民家の改装工事と石窯作りがスタートします。クラウドファンディングを通じた温かい支援もあり、念願の石窯が完成したのが2020年春のこと。長年勤めた仕事を離れ、江田島市に移住して約4年。2020年6月、ついに夢のパン屋『しまのぱん souda!』がオープンします。

酵母と炎。自然のチカラに心を委ねて

オリーブの実とはちみつを発酵させた自家製酵母に、北海道十勝産の小麦粉(2種類)、塩と水、そしてオリーブを加えて捏ね、ゆっくりと発酵。薪をくべた石窯でじっくり焼き上げたオリーブパンは、噛むほどに口の中に旨みが広がり、香ばしさも相まって食欲をそそります。だから、スープやお惣菜との相性も抜群。薄くスライスしてはちみつやオリーブオイルを垂らしたり、野菜やハムをはさんでサンドイッチにしたり、その楽しみ方は無限大なのです。そんなアイディアは店舗に併設されたカフェスペースの縁側で生まれることも。地域おこし協力隊を経てパン屋さんになったからこそ、作りたいと思ったこのスペース。島のお客さんが集い、そこに島外からのお客さんが混ざりコミュニティを作っています。「こうしたら美味しかったよ」「帰りにここに行ってみて」と、パンを通じて人と人との交流が生まれるパン屋こそ、西村さんが目指したオンリーワンなパン屋なのです。

写真 加藤郁夫 / 取材・文 村山ゆかり

店舗情報

写真:オリーブパン

オリーブパン

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