No.097絵画

絵画

現代画家が描く 板絵テンペラ画

人の体温を感じるような写実絵画

画家の王子駿さんに会いに、広島市立大学の芸術学部棟にお邪魔しました。6階の、学生さんの作品が所狭しと置かれる廊下を抜けた一番奥の部屋が王さんのアトリエ。美術館の展示室のような高い壁面に、精密に描かれた作品が展示されています。神聖な祈りにも似た気持ちが湧いてくる、宗教画を現代的に表現したような作品たち。髪の毛が一本一本描き込まれ、柔らかい産毛が見えてきそうな白い肌。驚くほどリアルなタッチを追求しながらも女性の背中には天使の羽が生え、頭には天使の輪が描かれるなど《リアルとイマジネーション》が混在しています。
王さんは中国出身の画家で、現在博士課程後期の学生でもあります。高い身長に知的な顔立ちのモデルの様な雰囲気の青年。日本に来て10年、表現者としてストイックに挑戦し続ける彼のお話を伺いました。

日本文化が好きで日本へ

王さんは子供の頃から絵が好きで、画家に憧れていました。中国の美術大专(日本の高等専門学校に該当)に進学し、さらに大专在学中に日本へ留学することを決めました。
「僕は日本のアニメが大好きだったので、元々日本に親近感がありました。そして、仕事の関係で日本に滞在していた父が日本行きを勧めてくれた事もあり、絵画の技術を更に伸ばすため日本で学ぶことにしたのです。」
王さんは九州の大学に入学し、卒業後に広島市立大学の院生になりました。
進学後、日本人画家の絵を見る機会が増えその上手さにショックを覚えた時もあります。「画家として生きていくのは大変だから、一般の企業に就職しようかな」と道に迷うこともありましたが、大学院に進んだ時に“画家になる夢を叶えよう”と覚悟を決めました。自分にしかできない絵画表現をするために心を燃やし、制作に力を入れていきます。学業の傍ら、東京のギャラリーにて作品の発表も始め画家としての活動を広げています。

毎作品、毎作品 限界に挑戦している

絵を描く間、王さんはワクワクする感情を大切にしています。「完成までビジョンを持ってワクワクしながら筆を走らせます。例えば、この細密な人物画のシリーズは写実表現を極めることを目指しています。普通では考えられない超絶技巧で写実の限界に挑んでいます。1枚描き上げるたび『前作より細密に、限界を越えよう』とチャレンジする、アスリートみたいな感覚です。」
只今、人物を描くことに夢中の王さん。人物はモチーフとして一番難しく、写真のように外観を写し取っても人の温もりや“存在感”はでません。いかに存在感を表現するかが課題であり、面白い所でもあります。
また王さんにとって絵は“自分と向き合うツール”でもあるそうです。自分の人生経験や感情がそのまま作品に流出していくからです。だから、1作品ごとに新しい自分に出会えるのがこの世界の醍醐味。王さんはこれからも情熱的にこの道を進み続けます。

中世のテンペラ画を現代に応用

今回お邪魔した時は博士研究制作の真最中でした。こちらは博士課程後期の博士論文のテーマに沿った作品です。中世ヨーロッパの宗教画(イコン)を思わせるような作品。5、6世紀の中世の教会では僧侶が修行の一環で聖母像やキリストの誕生など宗教画を描いていました。その後ルネッサンス時代に天才的な画家が何人も生まれ、絵画表現の研鑽とともに西洋絵画史が進歩していきました。
木板を削り土台を作り、金箔を貼り、“テンペラ絵具”で絵を描きます。テンペラとは顔料を卵の黄身と油を混ぜたメディウムで溶いて絵具にする中世で主流だった技法です。細い線を何度も重ねて描くことで立体感を出す、王さんの職人技が光る逸品です。制作中の様子も見せていただきましたが、思わず息が止まるような細かな筆さばきでした。
王さんは広島でも展覧会に出品されています。展示の日時などはインスタからチェックしてみてください。画面からでは伝わりらない絵画の迫力を、ギャラリーで直に感じてみてください。

写真 的野翔太 / 取材・文 日高愛子

店舗情報

写真:絵画

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