No.065オーバル深皿

オーバル深皿

経年変化を楽しむ木のうつわ

木の魅力を体験で伝える

2020年のクリスマス。小雪がちらつく中向かったのは、安芸郡太田町にある「M.SAITo Wood WoRKs」の工房。アーチ式では国内2番目の高さを誇るという温井ダムの近くにあります。工房の中は、木工作品や木工用の道具、キャンプ道具が所狭しと置かれていて、さながら「男の秘密基地」といった感じ。
工房の主人は木工作家の齋藤正明さん。「必要なものは大体自分で作る」という言葉通り、棚はもちろん、机、椅子など目につくものはほとんどが自作したものだといいます。そんな根っからの“モノづくりびと”である齋藤さんですが、最近は木工作品を作り展示・販売するという活動から一歩踏み出し、「カレーを作って木の器で食べる会」というワークショップを開催するなど新たなフィールドも開拓中です。
「木のうつわってとても使いやすい食器なんだけど、「直に食べ物を載せちゃいけないんでしょ?」とか、「手入れが大変そう」って言われることも多くて。そういうイメージを払拭するには使ってもらうのが一番だと思ったんです」。
そんなわけで、今回、齋藤さんと一緒にカレーを作って、木のうつわを実際に使わせていただくことになりました。

手にしてこそ感じる、木の本質的な良さ

もともと料理が好きだったという齋藤さん。その腕前は、自分でスパイスの配合を考えたり、入れるハーブや野菜も栽培したりと、すでに趣味の域を超えたレベル。当日、作ったカレーも、オリジナルレシピのタイカレー。料理は目と舌でいただくというけれど、その通り、料理の映える木のお皿とスプーンでいただいたタイカレーは絶品でした。
そして木のうつわも実際に使うことで、その使い心地がよくわかります。一番驚いたのは、思っていたよりとても軽いこと。そして、何より手触りが優しいのです。
カレーのような色が濃いお料理を入れると色移りするなど、木製ならではの注意点もありますが、気になったことはその場ですぐ齋藤さんに確認できるのもワークショップの利点。ちなみに色移りについては、革靴の手入れと一緒で、事前にうつわに油をよくなじませることで、多少は防げるそう。
そういえば、土鍋だって目止めするし、鉄フライパンもから焼きしたり油ならしをします。自然素材の道具は、きちんと正しい手入れさえすれば、手軽に永く使えるもの。そんな風にモノを大切にする暮らしは、人の心と毎日の暮らしを豊かにしてくれます。それは効率や便利さを優先しがちな現代にこそ、大切にしたいことの一つといえるかもしれません。

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暮らしの傍らにあるモノをつくる

齋藤さんにとって、モノづくりとは何か。それは、「日々の暮らしの中で必要なもの、こういうのがあったらいいよね、と思うものを作ること」だといいます。そして、そうしたモノづくりへの向き合い方は、お父様による影響が大きいのだそう。
「父は必要と思った物はなんでも作るし、作ることができるんです。物を作るという技術でいえば、僕なんて父の足元にも及ばない」。
実は「M.SAITo Wood WoRKs」の工房は、お父様が営むステンレス加工の工場の敷地内にあります。大手電機メーカーに勤めていた齋藤さんは31歳の時に木工職人を目指して脱サラ、広島に帰郷しました。その時、お父様が斎藤さんにかけた言葉は、「自分で好きなようにやれや」という一言だけだったそう。
「父もこの工場を一人で立ち上げて、今も一人で好きにやっている。僕らは“似た者同士”の親子なんです」。
齋藤さん自身も高校生になる息子の父親。「子育てって本当に悩ましいですよね。後悔と反省ばかり」。普段は職人らしくとても落ち着いた印象の齋藤さんが、子どもの話になった瞬間、ちょっと悩める父親の表情に。そんな、人間味あふれる一面も見れて、最後はちょっとほっこりしました(笑)。

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齋藤さんの逸品/オーバル深皿

今回、齋藤さんが選んでくれたのは「オーバル深皿」。「M.SAITo Wood WoRKs」の作品は一つひとつが手彫りなのでどれもが唯一無二。このオーバル深皿ももちろん1点物ですが、同じタイプの製作が可能とのこと。(その場合、彫りやサイズが多少異なることもあります)
実際にこのオーバル深皿でカレーをいただいたのですが、お料理を盛り付けるのにちょうど良いサイズ感で、使い心地も抜群でした。また木のうつわとしては珍しい白色も、お料理の見映えを良くしてくれるので重宝しそうです。
ちなみに亀裂が入ったり、欠けてしまった木のうつわは、漆を塗ったり、麻布を被せて漆で固めることで補強できるとのこと。「M.SAITo Wood WoRKs」では、そうした修理は全て無償で行なっています。
毎日の食卓を彩るとっておきの一枚を、「M.SAITo Wood WoRKs」で見つけてみてはいかがでしょう。

写真 加藤郁夫 / 取材・文 イソナガアキコ

店舗情報

写真:オーバル深皿

オーバル深皿

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