No.107刻み鴨つけそば

刻み鴨つけそば

「蕎麦で満腹になりたかった!」を叶えてくれるお店。

人柄も蕎麦も大らかそのもの

とても気さくな大将でした。取材の日、お店の扉を開けた瞬間に「よっしゃー! 計算が合ったぁ!」と笑顔でガッツポーズをしたその人こそが、『そば屋 二八十六』の店主長谷川祥さんでした。どうやら営業終了後のレジの締め作業をしていた様子の長谷川さん、初対面の僕にいきなりの気さくな笑顔。そのお人柄こそが、これから紹介する『そば屋 二八十六』の魅力のすべてを物語っていると言っても過言ではないかもしれません。野球やキックボクシングで鍛えたというがっしりした体型と人懐っこい笑顔で、誰にでも一瞬で好かれそうな長谷川さんが作る蕎麦は、その大らかさをそのまま表現したかのような豪快な大盛り。こんな大盛り蕎麦、初めてお目にかかりました。

日本酒が照らしてくれた蕎麦への道

「蕎麦が湯がき上がるのを待ちながら、とりあえず日本酒を一杯。」そんな“蕎麦前の作法”。長谷川さんが蕎麦の道を志したきっかけは、蕎麦よりもむしろ「日本酒」にありました。とにかく日本酒が好きで、日本酒を仕事にしたいと思っていたサラリーマン時代。蔵人、酒販店など、様々な選択肢の中で選んだのが、お酒を提供するという道でした。「お酒を提供するなら、“蕎麦前の作法”のある蕎麦屋がいいと思ったんです。」と話す長谷川さん。そんな長谷川さんは江戸蕎麦の老舗店舗への転職を決意します。蕎麦屋での厳しい修行時代の幕明けでした。「最初は軽い気持ちだったんですけどね、大間違いでした。本当にしんどかったですね。」と今だからこそ笑って話す長谷川さん。その笑顔の向こうには「丁稚(でっち)のような修行時代。数えきれないほど絞られましたね。」という厳しい修行の光景が滲みます。

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限られた人生ならば、選びたい道を選ぼう。

修行中、寝る間を惜しんで蕎麦に打ち込んだ長谷川さん。試しては怒られる、その繰り返しだったと言います。それでも長谷川さんは、研ぎ澄まされた五感で蕎麦のノウハウを体得しました。合わせて2つの蕎麦屋で延べ8年の修行を経た長谷川さんは、馬木の町に自身の蕎麦屋『そば屋 二八十六』を開きます。「蕎麦でもっとも大切なのは、“水回し(粉と水を混ぜ合わせる工程)”。」と話す長谷川さんの蕎麦は透明感のある黄白色に輝いています。
蕎麦の世界に飛び込こむ長谷川さんの背中を押したのは、やはり日本酒。150年の歴史を持つ島根東出雲『王祿酒造(おうろくしゅぞう)』杜氏(とうじ)のエピソードでした。仏門に入るかの如くすべてを捨てて蔵に篭る杜氏の「酒は作れて70歳まで。ならば、私が酒を作れるのもあと数回。」という言葉に心を動かされたと言います。長谷川さんは「限られた人生ならば」と、蕎麦の道に踏み出したのでした。

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至福が続く大盛り蕎麦

そんな長谷川さんが出す蕎麦はすべてが大盛り300g。見たことのない山盛り蕎麦です。「だって、蕎麦でお腹いっぱいになってほしいですから。」と長谷川さんは豪快に笑います。鴨肉を“刻み”にした理由にも、「肉が数切れしかなかったら、どのタイミングで肉を食べたらいいか分からないでしょ?」と少年のような微笑み。確かにこの蕎麦、いつまでも味わい深い鴨肉が蕎麦のお供をしてくれます。300gの大盛り蕎麦に躊躇したあなたもご心配なく。長谷川さんの水回しによって生まれた二八蕎麦は、ツルッと爽やかな喉越し。300gぐらいあっという間に胃袋直行ですから。シャキッと引き締まった二八蕎麦と、暖かい出汁と鴨肉の最高のコラボレーション。そんな至福のひとときを、どんな蕎麦屋さんよりも長く味わえる『そば屋 二八十六』の大盛り蕎麦。そこには、長谷川さんの快活でいて大らかな人柄が現れているのです。

写真・取材・文 MiNORU OBARA

店舗情報

  • 店名

    そば屋『二八十六』

  • 住所

    〒732-0031 広島県広島市東区馬木2丁目563−12

  • 連絡先

    050-1256-3809

  • 営業時間・
    定休日

    【営業時間】平日11:00~14:30 日曜11:00~14:30 17:00~21:00
    【定休日】水曜日

  • Instagram

    https://www.instagram.com/nihachijyurock/

写真:刻み鴨つけそば

刻み鴨つけそば

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