No.108和食

和食

舌と心と記憶に残る 何度でも食べたい和食

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八丁堀にある海鮮が美味い人気店

八丁堀にある“あんべぇ”は、本格的な和の味が手軽に楽しめることで人気の居酒屋です。臙脂色の暖簾をくぐると、木の温かみを感じる空間が広がっています。店主の武内秀介さんは作務衣を身にまとい、柔らかな物腰で迎えてくれました。
こちらでお店を構えて12年。昔見た昼休憩中の光景が、このお店を作る時の指針になったと言います。
かつて武内さんが社員として割烹で働いていた時のこと。お昼に立ち寄ったコンビニで、サラリーマンやOLが並び、軽食やゼリーなどを昼食代わりに買っていくのを目にします。「それを見て、若い人たちに『あたりまえ』の、旨い物を食わせてやりたいなと感じたんです。」と優しい表情で語る武内さん。
武内さんの“あたりまえ”という言葉…それはありふれているという意味ではありません。「料理は食材一つにも敬意を持ち、真心を尽くして調理すべし」という板前精神から発せられている言葉なのです。

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日本食の道に進むように出来ていたのかもしれない

調理専門学校を卒業し、就職活動で洋食を志望した武内さん。しかし内定が決まったのはホテルの和食レストラン部門でした。辞退も考えたものの、一流ホテルに就職が決まったと喜ぶ親の顔を見て就職を決めました。
和食の世界は上下関係も仕事も大変厳しいものでしたが、先輩やおやっさん(料理長)のひたむきな姿に多くのことを学んだと言います。
ホテルで2年働き、おやっさんに「お前は和食だと思うんじゃがの」と言われながらも、夢だった洋食の道に転向しました。「若さもあり転職しました。でも、休日に本屋に行った時、無意識に和食の本を手に取っている自分がいたんです(笑)。おやっさんのいうことは確かだなと、再び和食に戻りました。」
キャリアの途中、20代中頃に海外へ旅に出たことも。それでも、帰国後はやはり日本食に心が動き、働きながら独立に向け準備を始めます。この道に進むように出来ていたのかもしれませんねと、武内さんは微笑みます。

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精神誠意心を尽くす 武内さんの仕事

武内さんは居酒屋あんべぇを営む今でも、技術の研鑽を惜しみません。現在は師と仰ぐ和の巨匠に師事し、学びを続けています。「料理人の道は、先人が立っている山に登っていくような道です。個人の店を持つと人から学ぶ機会はどうしても減ります。おやっさんの姿勢を通して、料理に対する心意気を学ばせてもらうのは有り難いことです。」
無数にある表現の中から、素材の良さを引き出す探求は終わらないと武内さんは言います。
そして、料理の背景にあるのが生産者さんの想い。野菜は土づくりに人生かける有機農家さんの想いがあり、日本酒には蔵人の情熱があるのです。その想いを背負い、素材一つ一つに敬意を込めながら料理にし、お客さんに喜んでもらうのが武内さんの仕事です。
気を張れ、気を張れと先人から言われて来た言葉が今も自分を戒めています。前掛けの紐を締めた瞬間に、料理人としてのスイッチが入り、背筋が伸びる感覚になるのです。

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生産者さんの想いを届ける 牡蠣ちらし

こちらは「牡蠣ちらし」。肉厚な牡蠣に赤い紅芯大根、黄色の錦糸卵があしらわれた、華やかなちらし寿司です。県内の生産者さんが誇りをもって生産する食材をぎゅっと詰め込んだ、あんべぇらしい逸品です。卵は熊野の平飼い農場のもの、ご飯は大朝の無農薬農家さんのお米を土鍋で炊いています。ジューシーな牡蠣、有機栽培されたカブや大根を口に含むと、“それぞれの自然そのもの味”が体に染み込み口の中は幸せでいっぱい!
あんべぇではお通しに“お出汁”を提供します。普通の居酒屋ではないなという静かな感動と、続く料理への期待が生まれます。利尻昆布と鰹節で引いたお出汁を、この日私も飲ませていただきました。素材の滋味が舌の上に広がり、体が喜ぶようなお味でした。このお出汁を使ったお料理を一度食べると、また食べに来たくなるに違いありません。
舌と心と記憶に残るお店あんべぇ。季節の味に出会いに、暖簾をくぐってみてはいかがでしょう。

写真 加藤郁夫 / 取材・文 日高愛子

店舗情報

  • 店名

    あんべぇ

  • 住所

    〒730-0013 広島市中区八丁堀12-14

  • 連絡先

    082-222-7545

  • 営業時間・
    定休日

    【営業時間】月~土曜 17:00~24:00 (Lo 23:00)
    【定休日】日曜日と祝日の月曜日

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