No.114クグロフ

クグロフ

ほんのり優しく甘い、フランス仕込みのクグロフ

厳選素材で作るやみつきパンを求めて

真っ白なビル、小さなドア、チョークで書かれたゆるい手書きの看板。うっかりしているとパン屋だとは気づかないシンプルな建物。しかし開店すれば、ものの3分もしないうちにお客さんがやってくる。2020年10月にオープンし、瞬く間に広島パンラヴァーの心を掴んだ店の名は『MISAKI BAKERY』。オーナーの三崎信宏さんが作る約30種類のパンは、ハード系から総菜パン、菓子パン、サンドまで、幅広い種類が揃います。中でも一押しはハード系。心地よいもちもち感、しっとり感、続いて小麦の甘さ。ハード系特有の食べにくさは感じられず、フワッと軽い口当たりも楽しめるのです。「良い材料を使えば、良いパンが焼ける」。小麦は北海道産をメインに数種類を使い分け、砂糖は精製されていないグラニュー糖や素焚糖を使用。本気度たっぷりのパンとは逆に、三崎さんは淡々とした口調で話します。「うちは大したパン屋じゃないんですよ」。

スゴ腕ブーランジェの素朴な魅力とは

三崎さんが自店を構えるまでの経歴を簡単に辿ってみましょう。外国語の専門学校を卒業後、某有名パン店でアルバイト。その後、広島が全国に誇る『アンデルセン』に勤務。パン好きなら悲鳴をあげる『ドリアン』が休業中に店を間借りし、1年間限定のパン屋を開業。後、フランスでパン作りを学び、帰国後『シェラトングランドホテル広島』でブーランジェとして活躍…。華麗なる経歴の持ち主でありながら、三崎さんはどこまでも謙虚です。「学校を卒業してから、バンドをしつつ国内外をフラフラ。俺は自由な人生を送るんだ! なんて思っていました。僕は人の縁と運に恵まれただけ。だから大したパン屋じゃないんです。自信なんて、今でもありません」。このある種のコンプレックスこそ、きっと三崎さんの強み。自分を諦めている人は、劣等感を抱くことはないでしょう。正直で、真っ直ぐ。運と呼ばれた機会を実力に変える。三崎さんは、紛れもなく努力の人。その気高さは、堂々たるオーラを纏うパンに、しっかりと表れているのです。

パンを囲む食卓に、ごく普通の幸せを

お店の一角に置かれた本を見せてくれた三崎さん。「これはフランスの家庭用パンレシピの本。日本と違うのは、パンの形が不揃いなことです。綺麗に同じ形が揃わなくても、毎日同じじゃなくてもいい。店のコンセプトは考えないようにしているけど、唯一意識していることかな」。そう話す優しい眼差しを幼少期から知るのが、店頭に立つ妹の智子さん。過去オーストラリアのヴィーガンレストランで働いた経験を生かし、お店のパンへ投影します。その1つである「ひよこまめコロッケのサンドイッチ」の評判も上々です。コンパクトなワインセラーには、自然派のワインが並びます。今後チーズも販売する準備もしているとか。「パンとワインとチーズを囲んで、家族や友人と過ごす何気ない時間を提案したいですね」。日本ではまだまだ浸透していませんが、ヨーロッパではパンとお酒を合わせるのは日常です。日本のパン食文化に寄り添いつつ、新しいライフスタイルも提案。三崎さんが生み出すパンから、楽しいシチュエーションがグッと広がりそうです。

アルザス地方の伝統そのままに

三崎さんが働いたフランスのパン屋さんは、ドイツ国境近くのアルザス地方にありました。そこで日々焼いていたのが、クグロフ。山のような独特の形に、粉糖をかけたアルザスを象徴する伝統的な発酵菓子です。三崎さんにとって思い出深い逸品は、アルザスから持ち帰ったスフレンハイム焼きの型で作られます。1つ1つハンドメイドされる陶器は、ほのぼのとした色使いが魅力。陶器製のクグロフ型は金属製に比べて熱がじっくり伝わり、ふっくらとした焼き上がりになるとか。型自体が希少、数も少ないため、こちらは普段は店頭に並ばない品。購入の場合は、3日前までに予約をお願いしているそうです。小さなこだわりやひと手間を積み重ねた本場の味、大切なあの人との特別な時間にいかがでしょう。

写真 篠原ゆき / 写真提供 MISAKI BAKERY / 取材・文 大須賀あい

店舗情報

  • 店名

    MISAKI BAKERY

  • 住所

    〒730-0802 広島県広島市中区本川町2-1-13 1F

  • 営業時間・
    定休日

    【営業時間】10:00~売切れ次第終了
    【定休日】日曜、月曜

  • Instagram

    https://www.instagram.com/misakibakery/

写真:クグロフ

クグロフ

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