No.129スコーン

スコーン

水分は生クリームのみ、しっとりスコーン

パン作り講師からパン作り職人に

広電「佐伯区役所前」から北へ5分ほど住宅街を歩いていると、庭に小さな赤いピザ窯のある住まいにたどり着きます。角食パンやスコーン、手作りジャムを販売しているトネリコの、店舗兼住まいです。代表の梅川博子さんは、事務系の仕事をしていましたが、8歳年上のお姉さんに無料のクッキング教室に行かないかと誘われたのが16年前の2005年頃。それからパン作りにはまり、講師のライセンスも取得。当時住んでいたマンションで、しばらくは友達に生徒さんになってもらいながら、パン教室を開いていたのがはじまりと言います。「あの頃は友達と遊び感覚でパンを作っていました。まさか自分がパン屋になるとは思っていませんでしたよ」と原点を振り返りながら笑われます。

家族の縁でできているトネリコ

五日市でトネリコを開業して、2021年で8年目を迎える梅川さん。そもそもこの土地と建物に出合い住まいを移し、パン屋をはじめるきっかけになったのも、お姉さんだと言います。「注文住宅で販売されていたこの5軒並びのうち、ここだけ残っていたんです。それを姉が見つけて、『この土地がすごい気になるんよ!』と言ってきて、『ここでパン屋をしんさい』と鶴の一声が」。梅川さんは「え!?」と思いましたが、それを受け入れ土地購入から開業まであれよあれよと進んでいきました。開業までの間のある日、旦那さんが仕事で悩んでいる姿をそばで見ていてあまりに辛そうだったので、「(仕事)辞める?」と聞いたら「辞める」とかえってきました。そして旦那さんは仕事を辞め、梅川さんからパン作りのノウハウを一から教え込まれ、今では生地作り担当として一緒に働いています。取材日にはお会いできませんでしたが、きっと梅川さんに似た優しい人柄の方だろうとうかがえます。

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衝撃的なスコーンとの出合い

ホームページを作って宣伝したり生徒募集の営業をかけたりして、2階のキッチンでパンレッスンをしていました。転機が訪れたのは教室を3年ほど続けていた頃。縁あってカフェ講座に参加した際、修得する中にスコーン作りがありました。それまでのスコーンのイメージは、パサパサして飲み物がないと食べられない、という印象だったのが、講座を受けた時にその概念がすべて覆され、それからとりこになってしまったと言います。「色んな原材料を使っているところがありますが、牛乳や卵を使うのが一般的。水分は生クリームだけというのは聞いたことがないんですよ。生クリームだけにすることで、ここまでのしっとり感が出せるということに感動したんです」。スコーンの魅力にすっかりはまった梅川さん。トネリコの代名詞でもある角食パンの点数より、多く店頭に並ぶことになったスコーンを愛おしそうに見つめます。

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わたしが好きなものを作っていく

スコーンは常時6~8種類あります。水分は全て生クリームのみ。北海道十勝産の小麦粉・全粒粉を使い粉本来の旨味が楽しめます。サクッというよりふんわりパンのような柔らかしっとり感です。プレーンやチョコチップなどの定番味の他、フルーツや野菜などの季節の味も、期間限定で並ぶこともあります。柑橘系は特に作業時間がかかってしまい、体力的に辛い時があったのだそう。「平日3日営業をしていましたが大変な時もありました。そこへ新型コロナの影響があり、いったん働き方を見直すことにしたんです。自分が本当に作りたいものは何だろう、本当に必要なものは何なのか、初心にかえって見つめなおし、ようやく分かるようになってきたのが今です」。土日に営業するようにすると、何年ぶりかに訪れてくれたお客様に喜ばれたり、渾身の新作アンパンを購入されたお客様から「美味しかった」とメッセージをいただいたり。「還暦過ぎたからもういいでしょ! これからは自分の好きなものを作りたい。好きなものを作って自分がワクワクしないと、お客様にも伝わらないということがこの一年ですごく分かりました」。何かが吹っ切れたような明るく前向きな言葉に、こちらも自然とワクワクした気持ちになりました。

写真 加藤郁夫 / 取材・文 西岡真奈美

店舗情報

  • 店名

    トネリコ

  • 住所

    〒731-5127 広島市佐伯区五日市1-14-21

  • 営業時間・
    定休日

    【営業時間】(通常)11:00~15:00・(土)11:00~17:00 ※パンがなくなり次第終了
    【定休日】不定休

  • Instagram

    https://www.instagram.com/toritori210/

写真:スコーン

スコーン

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