No.163喫茶遠吠
個性豊かな人々が集う喫茶店
さまざまな活動を通じ石田ワールドを展開
作家・石田敦子さんは、実に多彩な人です。ふんわりと優し気な雰囲気をまといながらも、会話の端々にシャープな一面も見せる、そんな石田さんに出会ったのは、横川駅から15分ほど歩いたビルの一角にあるアトリエでした。このアトリエは、皮籐や紅籐で編む「かごバッグ」の教室や制作をする場所なのだそう。他にも革や布を使ったモチーフバックやブローチ、小物なども手掛けています。ここまでお話を聞いてハンドメイド作家の方かと思いきや、イラストレーターとして、雑誌「天然生活」や「Precious」、単行本の挿絵、映画「この世界の片隅に」の音楽を担当したコトリンゴのCDジャケットを手掛けたり、画家として個展を開いたり。他にも、陶芸や革細工も手掛けたり、「アスメモ」の名前でcow and mouseの広島公演の手伝いをしたりなど幅広い活躍をしています。いただいた名刺に書かれていた「描くこと・作ること・アスメモ」に関わるさまざまな活動をする石田さん。その作品はどれも一目惚れしてしまう不思議な魅力が溢れています。そんな石田さんの作品がどうやって生れてきたのか、その生い立ちからお話を伺いました。
保育園時代から続けた絵画教室が原点に
石田さんの人生には、大きな転機になる2つの出会いがあります。1つは絵画教室の木下先生との出会い。画家・木下和氏の奥様が営む教室に、石田さんは保育園時代から通っていました。「とにかく内向的で。保育園に行けなかったんです。心配した祖母が絵画教室へ通わせてくれたことが、創作活動の始まりでした」そこは小さな小学校低学年くらいまでの子どもが通う絵画教室でしたが、石田さんは高校3年生になっても通い続けていたそう。大勢の人と過ごすことが苦手だった石田さんにとって、ここでの創作は心落ち着く時間だったに違いありません。
高校を卒業後の進路に悩んだ石田さんは、木下先生に相談を持ち掛けます。「絵を描くアウトプットは出来ているから、インプットすることを勉強したら」という先生のアドバイスもあり、石田さんは美大ではなく広島大学総合科学部へ進学。思想と芸術、文芸という角度から、豊かな人間性を学ぶ学部で哲学を専攻しました。「大学時代はステーションシネマ(現・横川シネマ)で切符切りのバイトをしていました。ここでたくさんの映画を観るなど、学生生活を通じて、さまざまなインプットをしたことが、私の創作活動の原点になっています」
高校を卒業後の進路に悩んだ石田さんは、木下先生に相談を持ち掛けます。「絵を描くアウトプットは出来ているから、インプットすることを勉強したら」という先生のアドバイスもあり、石田さんは美大ではなく広島大学総合科学部へ進学。思想と芸術、文芸という角度から、豊かな人間性を学ぶ学部で哲学を専攻しました。「大学時代はステーションシネマ(現・横川シネマ)で切符切りのバイトをしていました。ここでたくさんの映画を観るなど、学生生活を通じて、さまざまなインプットをしたことが、私の創作活動の原点になっています」
厳しいオーダーに応え作品をブラッシュアップ
2つ目の出会いは東京にある「ギャラリーcomo」のオーナーとの出会いでした。在学中からその才能が認められイラストの仕事をしていた石田さん。大学卒業後は大学院に進学するも中退、そのまま就職せずに、イラストの仕事やアルバイトをして過ごしていました。その頃夢中だったのが「かご作り」。石田さんのかごを見た人から、作って欲しい、教えて欲しいなどの声が増え、30歳を迎える頃には、お母様と一緒に「アトリエ・タルホ」を開いて教室や販売をしていました。
「広島だと知り合いが買ってくれることが多くて。私のことを知る人がいない場所でも作品が受け入れられるのか知りたかったんです。そんな時に東京で素敵なギャラリーを見つけて。かごを置かせてもらうようお願いしたんですが……。置いてもらえるようになるまで時間がかかりましたね(笑)。オーナーの愛ある厳しい要望が、私の作品を育ててくれました」と当時を振り返ります。初め既製品の取っ手を使っていた石田さんでしたが、「すべて手作りに」というオーナーの要望に応え、革で取っ手を作るように。絵を飾る額縁も陶芸でつくるように。こうして革バックや陶芸なども石田さんの作風は広がっていきました。
「広島だと知り合いが買ってくれることが多くて。私のことを知る人がいない場所でも作品が受け入れられるのか知りたかったんです。そんな時に東京で素敵なギャラリーを見つけて。かごを置かせてもらうようお願いしたんですが……。置いてもらえるようになるまで時間がかかりましたね(笑)。オーナーの愛ある厳しい要望が、私の作品を育ててくれました」と当時を振り返ります。初め既製品の取っ手を使っていた石田さんでしたが、「すべて手作りに」というオーナーの要望に応え、革で取っ手を作るように。絵を飾る額縁も陶芸でつくるように。こうして革バックや陶芸なども石田さんの作風は広がっていきました。
石田さんおすすめの逸品/喫茶遠吠
2021年の春、石田さんは「喫茶遠吠」をオープンしました。実はこれはWeb上にある架空の喫茶店で、Instagram上に開店しています。マスターが営む「喫茶遠吠」には、個性豊かな客が訪れます。バックやブローチを作る人、革細工をする人、文筆家、イラストレーター、絵描き、陶芸家……。そう、全て石田さんの分身のような存在です。「Web上の喫茶店を訪ねてくる人たちが展示会をするんですよ。時々、その展示会が実店舗になったりして。喫茶店を考えたきっかけはコロナでした。予定されていた展示会が流れることが多くて。発表できない作品が増えてしまったけれど、展示用に実店舗を持つのは気が進まなくて。Web上ならできるのではないかと考えました」
イラストを描く時、ただ描くのではなく、登場人物の物語を詳細に考えるという石田さん。そうすることで世界観が出来上がり、より魅力的な作品になるのだとか。そんな石田さんの遊び心溢れる、空想の「喫茶遠吠」。これからの展開が楽しみですね。
イラストを描く時、ただ描くのではなく、登場人物の物語を詳細に考えるという石田さん。そうすることで世界観が出来上がり、より魅力的な作品になるのだとか。そんな石田さんの遊び心溢れる、空想の「喫茶遠吠」。これからの展開が楽しみですね。
写真 的野翔太 / 取材・文 山名恭代
店舗情報
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店名
石田敦子
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住所
〒733-0006 広島市西区三篠北町8-11長谷川ビル207
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営業時間・
定休日※問い合せはInstagramのDMからお願いします。
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HP
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Instagram
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その他
インスタ(喫茶遠吠):https://www.instagram.com/coffee_howl/
FB:https://www.facebook.com/atsuko.chibyon
喫茶遠吠