No.030旬野菜 畑の「葉菜束®(はなたば)」

旬野菜 畑の「葉菜束®(はなたば)」

葉も根も土も、野菜の一生を丸ごと全部味わう

心惹かれたこの土地で、新しい一歩を

志和町はなんと懐の広い土地か、ここを訪れるといつも感じます。田畑が広がり、のどかで穏やか。それなのに高速を使えば広島インターまで15分ほどで到着してしまう、そんな便利さも兼ね備えています。そして、この土地を強く愛する人がたくさん住む町でもあり、有機農園「どじょうや」を営む、新谷昌史さんご夫妻もそのひとりです。農地を探していた頃に、視界を遮る電線も無く広く開けた畑に一目惚れをし、この地に根を下ろすことを決めたのだそう。「自分が食べたい!」と思えて「安心して口にできるおいしい野菜」作りをする「どじょうや」ストーリーの始まりは、新谷さんが学生の頃まで遡ります。

一生続ける仕事として農業を選択

埼玉県出身の新谷さんが農業に憧れを持ったのは、学生時代を過ごしたつくば市での素敵な出会いがあったから。茨城県の厳選した特産農産物を扱うお店「うなぎや」の存在は、新谷さんの人生に大きな影響をもたらすのでした。うなぎやには看板商品の「干し芋」がありました。厳選した農家から仕入れたサツマイモで作っていましたが、「もっと干し芋を極めたい」と店主自らサツマイモを有機栽培で作ることに。いつしか店主は、干し芋農家にもなっていきました。うなぎやでお世話になり、その過程を一緒に過ごしていた新谷さんは、店主の納得するまで追求する探求心と行動力と、楽しそうに生き生きと暮らす姿に憧れを抱くようになりました。
 大学卒業後はIT企業でサラリーマンとして勤めていましたが、自分の生き方を考える日々が続きました。「誰の何のための仕事をしているのか」と、ふと考えることもあったそう。「定年がリセットボタンのように思えて。ボタンが押されて別のことをやるそんな印象を持っていました」と新谷さんは当時を振り返ります。「一生続けられる仕事をしたい」そんな思いが心の中で育つようになりました。
「おいしい物が好き。食いしん坊なんですよね」という新谷さんは、その関心から各地の農家を訪れ有機農業に魅せられていきました。有機農業の可能性を確信できたとき、うなぎやへの憧れと農業の魅力が重なり、サラリーマンを卒業する決意を固めます。そして2011年3月末に会社を辞め、廿日市や志和町で農業研修を終えた後、2013年4月「どじょうや」として独立しました。「どじょうってうなぎの子分みたいじゃないですか」と新谷さんは笑います。屋号は「うなぎや」への敬愛の証であると共に、野菜作りには土(土壌)が大切という強い思いが込められています。

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目指すは「昔のあたりまえ農業」

「もともとここは牧場主さんが、牧草を育てていた畑なんです」農業研修を受けていたときに「広島市内中心部からも近く環境の良いところ」に農地と住居を探していた新谷さん。志和町で今の畑がある景色に強く惹かれ、持ち主との交渉を粘り強く重ねました。初めは断られることもありましたが、新谷さんの熱意が届きこの畑を譲り受けることに。除草剤や農薬を使わず牧草を育てていたこの土地は、新谷さんが思った通りの健康な土壌でした。
「健康な土はあらゆる微生物が共存しています。そこに住む虫も生える草も土を豊かにしてくれる貴重な存在です」そう語る新谷さんが目標にする農業は「昔はあたりまえに行われていた農法」。昔の人々が工夫をしながら営んできた、自然と共にある農業をお手本にしています。「自然の生態系を崩すことない環境で、たくましく育ってきた野菜のパワーも一緒に食べてもらいたいです」と新谷さんは笑顔で話してくれました。
野菜作りは自然と共にあるからこそ、ままならないこともあるといいます。「平成30年7月豪雨災害」では志和地区も被害を受けました。どじょうやの畑は表面の水が引いても、土壌に蓄えられた地下水の水位が高い状態が長く続いたのだそう。それにより根腐れをおこし枯れてしまう野菜が続出しました。「抵抗しようがないこと」とこの経験から得た学びをこれからの農業に生かし、今は農地の使い方を再考したり、加工品に力を入れたりしているそうです。「自分で育てた作物ももちろん、信頼している生産者さんのものを合わせたりして、自分がおいしいなと思える加工品にも挑戦していきたいですね」これからも新谷さんが繋いでくれる、自然の恵みが凝縮された「食べておいしい」ものが、たくさんの人を幸せにしてくれることでしょう。

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新谷さんおすすめの逸品/旬野菜 畑の「葉菜束®(はなたば)」

どうじょうやの土は、落ち葉や米糠、稲わら、醤油粕など、主に身近なところで手に入る植物由来の有機物で土づくりをしています。健康な土で育った「今の畑のオススメ」を花束のようにセットにしたのが、新谷さんの「葉菜束®」です。この日も畑を練り歩きながら、食べごろの野菜を組み合わせてくれました。「生でそのまま食べるとおいしいですよ。根っこや野菜の固いところでベジブロス(野菜出汁)にも使えます」
どじょうやのインスタグラムには、新聞紙でクルリと巻かれた「葉菜束®」を手に微笑む人々の写真が並びます。喜びに溢れる笑顔を引き立てる「葉菜束®」。大切な人に届けたくなる、そんな逸品がここにあります。

写真 加藤郁夫 / 取材・文 山名恭代

店舗情報

  • 店名

    どじょうや

  • 住所

    〒739-0267 広島県東広島市志和町別府1516-5

  • 連絡先

    070-6690-4129

  • 営業時間・
    定休日

    【営業時間】8:00~日没まで
    【定休日】不定休

  • Instagram

    https://www.instagram.com/dojoya__organicvegetables/

写真:旬野菜 畑の「葉菜束®(はなたば)」

旬野菜 畑の「葉菜束®(はなたば)」

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