No.031プラネットリング

プラネットリング

ゆっくり、のんびりな器づくりを一生の仕事に

手作り感満載の隠れ家工房

「ぽれぽれ」とはスワヒリ語で「ゆっくり、のんびり」という意味なのだそう。竹原市下野町にある竹原中学校から、車一台がようやく通れる細い道を進むと、隠れ家ような工房が現れます。ここは陶芸家の下迫瑞恵さんが、ぽれぽれな作品作りと教室を開催する工房。古い納屋をリフォームしたこの場所は、2年もの月日をかけて下迫さんのお父様がコツコツと手作りで作り上げた愛情いっぱいのスペースです。1階が工房、2階はギャラリーで、秘密基地に入るような階段を登ると、下迫さんの作品がずらりと並んでいます。普段使いができて、毎日が少し楽しくなる、そんな下迫さんの作品は、手にするとホッコリとした気持ちになれる優しいものばかりです。

向上心が空回りして、一度は諦めた陶芸の道

ぽれぽれ工房が誕生したのは2011年。そこまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。下迫さんが陶芸を始めたのは、広島市内で会社員をしていたときのこと。陶芸サークルに入り、趣味で器や花器を作っていました。「始めたころは陶芸が楽しくて仕方なかった。仕事中も陶芸のことを考えるほどのめり込んでました」決して自分は器用ではないという下迫さん。「自分が物を作れるとも思わなかったし、自分が想像したものが形になることが、こんなに面白いのだと衝撃的で楽しかった」と当時を振り返ります。「誰よりも陶芸が下手でした。趣味なんだから軽い気持ちで取り組めばいいのに、でも上手くなりたくて」向上したい気持ちとそれに追いつかない自分の実力とのギャップに耐え切れなくなり、下迫さんは10年続けた陶芸を辞めてしまいました。

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最後に残ったのは陶芸だった

30代も終わりを迎えようとしたころ、下迫さんは自分の生き方について深く考えるように。「自分が出来ることで自分のペースで続けられること、それを一生の仕事にしよう」と自分自身を見つめ直す日々を送りました。そして最後に残ったのが陶芸。「一生できる仕事はこれしかない」と陶芸の道を歩むことを選びました。
 「教室で教えること、作品作りをすること、どちらが欠けても私らしくない。陶芸を教えることで、作品作りの刺激をもらっている」と下迫さん。人に伝えたことはブーメランのように自分に返ってきて、その度に自分自身を見直すきっかけになると話します。「作品作りは自分自身との対話。誰かと比較するのではなく、自分がどれだけ納得するものが作れるか」ということを常に大切にしているそう。「自分と向き合うのは厳しいこと」と言いながらも「自分で選んだことなので、工房を持ってからは一度も陶芸を辞めたいと思ったことはない」と話します。「作品には自分の心が現れます。自分を良く見せようと作るのではなく、自分自身を磨き心が良くならないと、作品も教室もうまくいかない、そう思いながら日々陶芸と向き合っています」と語ってくれました。下迫さんはこれからも自分と向き合いながら、一歩一歩陶芸の道を歩み続けていくでしょう。

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下迫さんおすすめの逸品/プラネットリング

直径30センチはある大きなドーナッツ型の作品は、一輪挿しの花器。普段使いができる器を作る下迫さんですが、中でも好きなのは花器を作ることなのだそう。「形に決まりが無く自由な花器は、さまざまな挑戦ができますね。中でも一輪挿しは最も好きなアイテムです」と話してくれました。信楽の土を主に使う下迫さんの作品は、ザラザラとした素朴な手触りの質感が特徴です。ここ数年、下迫さんがテーマにしているのは、宇宙・惑星をイメージした「プラネットシリーズ」。ブルーとグリーンが絶妙に混ざった下迫さんが思い描く色を追求しています。工房を開いてから毎年1回開催するという展示会に合わせて作った今年の作品は、「自分がイメージする地球っぽい色合いが出せた」と下迫さんのお気に入りのひとつに。
下迫さんの教室は、毎月第2・第4木曜と日曜に開かれています。お試し体験コースもあるので、あなたも陶芸の世界に触れてみませんか。

写真 加藤郁夫 / 取材・文 山名恭代

店舗情報

写真:プラネットリング

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